余談、











膝の上に抱いた愛しい存在は、突然の出来事に驚いて身をよじって離れようとする。
私は片腕でそれを制して後ろから腰を抱き、ミカゲの顔をこちらに向けた。


「アヤナミ、どうし―っ」


ミカゲの言葉が終わらないうちに唇を奪い、黙らせた。
ああそういえば帰り際以外でキスをしたのは久しぶりだったな。
思い出すと同時に触れるだけで済ませる筈だったキスが深くなり、絡まる舌の感触に酔いしれる。


「アヤ…ナ、くるしっ…」


片言で言われた言葉に従って、唇を離したが、すぐに押さえられそうにない劣情に苛まれたまま、朱くなった、十字の傷がついた頬にキスをして彼のシャツのボタンを外しだし、肩を覆う白い布を剥ぐ。
産毛に覆われた柔らかな肩はシャツの色と対照的に健康的な色をしており、瞳を潤ませて此方を向いた顔から肩にかけての緩やかな曲線が私を誘う。


「あや…?」

「ミカゲ」



今から此処でお前を抱く。
口に出さなかった言葉をミカゲは正確に理解して、驚きに目を開き顔を更に紅くする。
誘われるがままに肩を抱き口を這わせると、ピクリと体を震わせたミカゲから制止の声。


「ちょっと待て、ここ、居間…っ。」

「問題ない。」


隣の家の住人ならば先程嬉々として出掛けて行ったのを見たよ。
車のキーを片手に、もう片手に何故そんなに喜んでいるのか判らない、といった顔をしたの恋人の肩を抱いてな。


肩から首筋、耳の裏に唇が移動するまでに、私はその事をミカゲに告げた。
そう、邪魔をする者は何処にもいないのだ。


「すまない。」


耳の裏を舐め上げて、震えた肩から手を放し、もう一方の肩を包むシャツに手を掛けて。
瞼を強く閉じたミカゲの耳元で囁く。


「寝室に移動する間すら、堪えれそうにない。」

「ばっ…!」


真っ赤になってこちらを向いた顔に笑みを浮かべ、体の向きを変えミカゲをソファーの中に沈めた。
ふわりとミカゲの作る珈琲の香りが漂う。
私は困った顔をした愛しき存在の肩に顔を埋めて、久しぶりに嗅いだ気がするその香りに酔いしれる。


「…直ぐに私の事以外、何も考えられなくしてやる。」


此処がどこかも、今が何時かすらも分からなく程に。