我慢出来ないんです!!





・ミカゲとテイトが普通に軍に居ます
・ミカゲはnot参謀部。テイトはアヤナミ様のベグライター
・恋人設定
・(日数だけならそれなりに立っているけど)付き合いたてです









すごく、大好きな人がいる。
















参謀部宛の書類をひったくるように持って、扉の少し手前で深呼吸をする。
おそらく、今頃この扉の先の、更に奥の部屋で自分の恋人は帰還報告をしている頃合いだろう。
仕事だと判ってはいるが、最初に会えるのは少し羨ましい、なんて思ってしまって卑しさに頬が熱くなる。
今が仕事中だということを思い出して落ち着かせるように軽く胸を叩いてから、時にこの音が聞こえないくらい向こう側が煩くなっているのを思い出して、少しだけ強めに扉を叩く。勿論失礼しますと言うのを忘れずに。


「ミカゲ!いらっしゃい。」
「よっすテイト。お勤めご苦労様。」
「あーっミカゲだー。」
「こんにちはクロユリ中佐、ハルセ先輩。」


喜色満面の笑顔で出迎えてくれた親友と二人の上官に挨拶をし、走り寄ってくるテイトに向かって歩きながら、そっとあたりを見回す。
いつもならテイト以上の速さで抱きついてくるあの人と、それをたしなめてくるあの人の部下がいない。


「参謀長官あての書類を預かってるんだけど、今大丈夫かな。」
「今は、カツラギ大佐と話してるから…代わりに俺が受け取ろうか?」


目の前まで来た親友に持っていた紙の束を見せると、少し嫌そうにそれを見て手を差し伸べてくれる。持ってきた量はあまり多い方ではないが、テイトの顔を見る限りでは残っている仕事量にこれを足すのは相当嫌なようだった。


「おうせんきゅ!署名もらえたらいいものばっかだから、そんな顔すんなよ。」


腕の中にあった書類をばさりと渡すと、苦々しい表情でそれを受け取った。
気持ちは判らなくもない。ほぼ見るだけと言っても内容把握に時間の掛かりそうなそれは、下手な書類よりも時間を取られる可能性のあるものばかりだ。
参謀長官のベグライターは大変だなと苦笑を浮かべていると、唐突に右手を捕まれた。


「ねー、ミカゲはこのあと急ぎで戻らないといけない?」
「中佐?いえ、少しは大丈夫かと。」
「じゃあ、一緒にお茶しよ!もうすぐカツラギ大佐も戻ってくるよ。」


両手でしっかりとミカゲの手を捉えて、笑顔で頼まれたら断れるはずがかい。
ミカゲも素直に笑って承諾して、引っ張られるまま簡易の応接セットとして置かれたソファーに座る。

少し頬を紅潮させたテイトは慌てて飲み物取ってくる!と出ていった。

「僕もうすぐ今の書類終わるから、ちょっと待っててね。」

こちらも嬉しそうに笑って手を離し、自分の席へと戻っていく。
羽が生えているのかしらと思えるほど軽快な動きを微笑ましく思いながらふと窓を見上げると、先程よりも大きな雨粒が窓ガラスを叩いていた。


「雨、凄いですね。」
「一部では雷も伴って、スカイランナーが運行を停止しているそうだよ。ヒュウガ少佐達の船も戻りが遅くなるらしい。」


答えたのは中佐の隣の控えていたハルセだ。どうりでいない訳だ。今頃はこの雨の向こうで帰還できる時間をつまらなそうにしながら待っているに違いない。そう思うと少しだけ笑みがこぼれた。


「夕方以降には雨も上がるらしいから、日付が変わるまでには少佐達も戻っているだろうとカツラギ大佐が仰っていたよ。」
「そう、ですか。」


どんな風に見えたのだろうか、付け足すように言われた言葉にそれだけ伝えるとハルセは仕方ないと言った顔で笑った。











非常灯の灯りだけがやけに光る室内で、ぼんやりと宙を眺める。
そろそろ戻ってきている頃だろうかと思うと早く寝ないといけないのに寝付けなくて、ミカゲはごろりと体の向きを変えた。
視線の先には昼間の嵐が嘘のように静かに瞬く星が見える。時折流れてくる雲は穏やかだ。

明日には会える、そう思っているせいか興奮して眠れない。
まぶたを閉じてゆっくり呼吸を整えようとするが、あの人の顔が思い浮かんでしまって逆効果だ。

ミカゲは仕方なくため息をつくと、上で眠っている親友を起こさないように、息を殺したままベッドから這い出した。

そろり抜けだした廊下を出来るだけ音がしないように歩く。
もし寝間着で出歩いていたのがだれかに気付かれたらと思うと冷や汗が出るが、暗闇の中で静かに着替える技術などあいにく持ち合わせてなどは居ないのだ。テイトだって士官学校時代に夜中に戻ってきた時に自分が起きないように着替えてくれていたけど、やっぱり起きてしまっていたから仕方がないとミカゲ自身よく判らない言い訳をする。

ミカゲ達が利用している部屋から階級持ちが住む場所まではそれなりの距離がある。
闇に近いせいかいつもより長く感じる道のりに、次第に早足になる。だが全力で走ると音がしてしまうため、緩やかな曲線を描く廊下をできるだけゆっくりと歩くことに意識する。
少佐が既に眠っているか、部屋にいなかった時は諦めて帰ろうと胸元を握りしめながら、ミカゲには何故かヒュウガが部屋で待っていてくれている確信があった。
自分に自身があるわけでもないのだが、なんとなく、そう思えて仕方がないのだ。

そんな風に待っていてくれていると思ってはいたが、実際に目指す人の居室の前に人を認めた時、ミカゲは一瞬体をこわばらせた。
だがすぐにそれが目的の人だとわかると、音が鳴るのも構わずに駆け出して手を広げたその先に抱きつく。


「久しぶり。」


耳朶を震わせた低い声にミカゲはうんと頷いて胸元に顔を埋める。実際は五日間程度だったのだが、恋人としてではなくても毎日顔を合わせていたため妙に長く感じてしまっていた。
腰に回された腕に力が入ったかと思うと、足が地面から離れる。ヒュウガがくるりと体を半回転させると、二人共部屋の中に入っていた。すとんと降ろされてまた抱きつかれる。


「おかえり、少佐。」
「ただいまー。二人きりのときはヒュウガって呼んでってば。」


顔を上げると額に柔らかいものが触れて、柔らかく微笑んだ恋人の顔が見て取れた。
やんわりとたしなめて、嬉しそうに頭を撫でてくれる手のひらに安堵しながらごめんと呟く。


「雨、大変だったんだな。」
「俺たちはずっと艦内で待っていただけなんだけどね。あんまりにもひどい雷でねー。ラファエルの暴走でもあったのかと思ったくらい。」


会話をしながら、手を引かれた先はベッドの上。
先に座ったヒュウガが自身の太ももを軽く叩いたのを見て、喉の奥でぐっと音を鳴らしてしまった。ヒュウガがこうするのは、上に乗るようにとの合図だというのは何度も経験している。

「疲れてるだろうし・・・つらいだろ?」
「ううん?さっきも言ったでしょ、艦内で退屈してただけだってばー。あ、座る時は横向きに座ってね顔見たいから。」


なんとか回避できないものか、と気遣うフリをしてみたが、そんなことはないと言われてしまえば拒否できない。しかも何気なく自分の要求まで言ってきている。
仕方なしに言われるがままヒュウガの上に横向きに座って見上げてみるが、予想以上に顔の距離が近く思わず視線をそらして首筋に顔を埋めた。
ただでさえ恥ずかしいのに、久しぶりに間近に見るからか、いつもより顔が熱い。頭上から僅かに笑い声が聞こえてくるがあえて聞かないふりをして腰に抱きついた。

本当は少し寂しがりやのヒュウガを抱きしめてあげたいなんて思っていたのだけれど、思っていた以上に自分自身も寂しかったのかもしれない。鼻孔をくすぐる匂いと、人より少し低い体温に、ほうっと瞼を下ろす。


「ミカゲくーんー?近寄ってくれるのは嬉しいけど、それじゃ顔が見れないよ。」


顔上げてと頭を撫でるヒュウガに嫌々と首を振り、ミカゲは更に体をヒュウガへと引き寄せた。
足もベッドに乗りあげて片足の太ももが脇腹に触れる。ヒュウガの手がミカゲの肩に触れて、引き剥がす為かと思ったミカゲは更に抱きしめる力を強めた。

あら、と頭上で意外そうに声がしたが、直ぐにその手はミカゲの首筋を撫で始めた。なんとなく猫扱いされているような気がするが、気持ちいいしまあ、いいかと瞼を閉じる。
するとさっきまで願っても来なかった睡魔がやってくるのだから、人というのはとても現金だと思う。でももう少しだけこの中にいたいと顔の角度を変えると、耳元でそっと名前を呼ばれた。


「ミカゲ?眠たいなら送るよ。」
「もう、ちょっと。」


まだ帰りたくないのだと、少し体を離し目を擦ってやり過ごそうとするが一度訪れた眠気は中々引いてはくれない。実際普段なら眠っている時間帯なのでそれも仕方ないのかもしれないが、せっかくの時間をこんな理由でなくすのは勿体無いと思うのだ。

ヒュウガの体からもう一方の手も放して両手を顔を押さえつけるようにしてみるが、頭が重い。どうしたものかと眉を寄せると、下から手が伸びてきて救い上げるように顎を上に向けさせられた。

急な動きと、目の前にある鮮やかな赤色にぱちりと瞬きを一つ。裸眼をまともに見るのは初めてだとぼんやりと考えて、ふと目の、正確には顔の位置がやたら近いことに気づいておもわず声を上げた。


「だっ。」
「駄目じゃない。」


駄目じゃないって何が、と聞く前に開きかけた口がヒュウガのそれに塞がれた。見開かれた目に映るのはいい年をしている割に綺麗な肌と、鮮烈な赤。
見つめられているのが居た堪れなくなり目を閉じると唇の感触がさっきよりもはっきりと分かるように感じてさらに恥ずかしくなったが、だからといってまた瞼をあげようものなら今度は今以上に恥ずかしくなりそうな気がして、やめた。

何度か唇の位置を確かめるように口付けられた後、滑った感触が下唇を撫でた。
いわゆるディープキス、というものが未経験だったミカゲは、生暖かいそれが舌先だと認識するのが遅れる。気付いた時にはミカゲの口腔内に入り込み、暴れまわっていた。

驚いて体を引こうとするが、いつの間にかしっかりと首の後ろを押さえられていて動かせない。
それどころか、逃げようとしたのに気付いたからか顎にあった手を腰に回され身動きがとれなくなる。
離してほしいと両手を被さる体に押し付けるが、ざらりとした舌が上顎を捉えた瞬間、言いようのない感覚に体が竦み上がってしまい、離そうとしていたのに手が勝手に服を掴む。

止めて欲しいと、くぐもった声を上げてみるが、逆に気をよくしたのか口の角度を変えてさらに深く弄ばれる。

舌を吸われ歯列をなぞられ、貪るように口の中を蹂躙され、ヒュウガの唇が離れる頃には酸欠で頭が回らなくなっていた。


「なっ、にを…。」
「いや、こうしたら目が覚めるかなーって思ったんだけど。やりすぎちゃった。」


ごめんね。そう言ってこめかみにキスをする仕草が様になっていて、合っていた視線をわざと外して呼吸を落ち着かせる。
恋人同士なのだからこういった事もするのだろうけど、さほどまとまった時間で合っている回数自体は少ない為、ミカゲはこういう行為に慣れてはいなかった。というか、舌を入れられたのは初めてで。


「ミカゲ、やっぱり帰ろうかー。」
「目、覚めたのに帰らないと行けないのか。」
「うん、このままだと俺、我慢できなくなって襲いそうだからね?」
「っ、帰ります。」


楽しそうな声とは違い、欲を孕んだように指先が首筋を撫でていくので、おもわず息を詰まらせて答えた。
見事に振り回されきってしまったなあと、赤くなっているだろう顔を上げてヒュウガを見ると嬉しそうに顔をほころばせていたから、弄られっぱなしでも今日我慢せずに会いにきてよかったとミカゲもヒュウガと同じように顔を綻ばせた。




















大好きな人がいる。
好きすぎて、時々周りの事が見られなくなってしまうけど、それも上手く制御してくれるから、余計に好きになってしまう。

でも、もし、二人共我慢できなくなったら?

(いつか本当に襲われたりもするんだろうな。―考えただけだけで、顔が熱くなりそう)