You who are poor at being deceived
・ミカゲとテイトが普通に軍に居ます
・ミカゲはnot参謀部。テイトはアヤナミ様のベグライター
・恋人設定
それでも大丈夫って方だけれっつすくろーる!
「少佐みーっけ!」
昼を少しばかり過ぎた要塞内の中庭、きつくなった日差しを避けるように、一番大きな木の影に存在するベンチに見知った顔を見つけて、ミカゲは満面の笑顔を向けて声を掛けた。
振り向いた顔は、些か良い顔とは言わず。
おやと首を傾げて近づくと、ベンチの背もたれ越しに腰回りに抱きつかれた。
「ヒュウガしょーさっ、どうしたんですか?」
腰に埋まる頭を軽く叩く、ヒュウガはすぐに離れる。
但し先程からのむくれ顔は相変わらずで、話を聞いてくれと言わんばかりである。
「ミーカーゲ〜。」
「はいはい、何かあったんですね?」
いくら遅めのお昼休みをを頂いたとはいえ勤務中だしと敬語で対応するとヒュウガは少し残念そうな顔をした。
そんな顔をされてもこの中庭は休憩以外でもよく他部署へ移動する時のショートカットとして使われているのを知っているので、敬語を外すことは出来無い。
拗ねるヒュウガを無視して隣に座ろうとすると、腰を捕まれて横に移動、ヒュウガの膝の上に降ろされる。
自分より大きな膝の上は思っているよりも安定感があるが、見られるのは恥ずかしいと右肩にかかった重みの方へ視線をやれば、思った以上に眼の色が暗い。
「・・・今からお弁当食べるんですけど、焼きそばとソーセージとポテトサラダと厚焼玉子のどれかいります?」
「全部をちょっとずつ。」
ご飯とおかずで半分に割ったお弁当箱を片手で持って、遅い昼食を食べる。飲み物が欲しくなった時はヒュウガが代わりに持っていてくれた。
自分で作ったおかずを渡すと「ミカゲが作るご飯はいつも美味しいね。」と言ってくれながら咀嚼していく。
普段ならもっと過大評価して言ってくることを考えると、今日の落ち込みようはもはや異常だった。
どうしたものだろうかと思いながらお弁当を食べ始めて、半分程食べ終わった頃、左側に移動していたヒュウガ顔がもそりと動いた。
「今日、誕生日・・・・。」
「はい、お誕生日おめでとうございます。」
昨夜、といっても日付は今日の深夜に言った台詞を、ミカゲはもう一度言った。
ヒュウガは特に返事が欲しかったわけではなく話の突破口としようとしているらしくそれには曖昧にうん、と応える。
「昨夜は本当に有難う。それでさ、その時に今日も仕事終わったら会おうって言っただろ?」
「言いましたね。お互い頑張って、定時に終わりましょうと。」
「その時はもっと可愛く言ってくれたけどねー。」
「可愛く言った覚えはないんですけどねー。」
「敬語ジャナイマジックって凄いねー。」
それマジックじゃない、と言うか迷って、結局ミカゲは言わずにソーセージを口に運んだ。
ここでそれを突っ込んだら話がそれて休憩時間が終わってしまう。
ヒュウガ自身もそこにはさほど拘わってはいないようで、話はすぐに戻った。
「それでさ、急いで仕事終わらせようと自分でも珍しく仕事頑張ろうと思ってたのに、行った瞬間アヤたんからはなんで来たんだって顔されるしコナツはやんわりと外出を促すし挙句にクロユリからは出てけって・・・」
「何か変なもの食べたと思われたんでしょうかね?はい卵。」
「や、それなら多分医務室行けって言われるから違うと思うんだー有難う。」
喋りきってから半分に切った厚焼玉子を食べるのを見て、ミカゲも残りの半分を口の中に放り込んだ。
下手をしたら一週間くらいまともな食事を取らなくなる親友のお弁当と一緒に作っているため、厚焼き玉子もテイト好みの砂糖仕立てだ。
だしで作ると仏教ヅラでお弁当箱を突き返されるので、今ではずっと砂糖で作っている。
たまにはだし巻き卵も作りたいなあ、と上を見上げて揺れる木漏れ日に目をやると、太陽に当てられて透ける葉先に目を奪われた。
さわさわと、木の葉同士が擦れ合う音が聞こえる。
久しぶりに少し暑いくらいに気持ちよく晴れた空の下で、好きな人と一緒に居ることが出来て。
自分で作ったお弁当は、今日もそれなりに上手くできた。
後ろからおかずを奪っていくヒュウガは美味しいと言ってくれて、今日はヒュウガの誕生日なのに、自分がお祝いをもらっているようだ。
「少佐、一つ質問があるのですが。」
「なんだいミカゲ君。」
「今日も会うって、参謀部の皆さんに言ってます?」
「それがねー、言う前に追い出されてしまいましたのよ。」
冗談めかして言っているのが逆にダメージが大きかったのを伺える。
ミカゲはお弁当の中身を急いで掻きこむとお弁当箱を片付け、不思議そうに目を向けてくる少佐の膝から飛び降りてくるりと半回転。ヒュウガの目の前に何も持っていない掌を差し出した。
「少佐、参謀部に戻りません?」
「いいけどなんで?」
目を瞬かせながら、それでも手を取って立ち上がったヒュウガの手を握りしめ、参謀部まで早足に歩き出した。
今から行って休憩時間内に仕事場に戻るなら、少し急いだ方がいい。
「昨日行った時も思ったんですけど、ヒュウガ少佐はサプライズが好きなのに、自分がサプライズをされるのに慣れなさすぎです。」
中庭から廊下に出ると、流石に人の目が出てきたが気にせず歩く。
どうせ元々ヒュウガは誰かに襟首を掴まれていたり引きずられてたりする事が多いのだ。
相手は違うが引っ張られていることだってきっと日常茶飯事だろう。このくらい噂にもなるまい。
ミカゲが言ったことに思うことがあったのか、手が強めに握り返されて視線を向ける。
「・・・そう、なの?」
「いやそうじゃなかったら何だって言うんですか今日少佐の誕生日でしょう。」
一息で言うと再び視線を前に戻す。
今日という日に少佐を追いだそうとするなんてそれ以外に思いつかない。
そういえば、今朝のテイトはやけにそわそわしていた気がするなあとか、それなら先に言っておいてほしかったなとか思ってしまうが、それはこちらも同じことか。
参謀室の扉5メートル程前で二人共一緒に足を止める。
一度視線を交わし合って、そろりそろりと足音を忍ばせて扉に張り付く。
中からは楽しそうな声。それを聞いたヒュウガは先程のような暗い表情に戻りかけたが、ミカゲが人差し指で口元を抑えると直ぐに消えた。
押さえた指先をそのまま自分の口元に持って行くと、静かにと目で合図を送り少しだけ扉を開けた。
「クロユリ中佐、飾り付けここで合ってますか?」
「うん、オッケー!あ、ハルセハルセ!ケーキ準備した?」
「はい、少佐用とクロユリ様用、2つ準備してます。」
「カツラギ大佐、プレゼントこれで大丈夫でしょうか・・・」
「要は気持ちですよテイト君。」
そこまで聞こえた所で、ミカゲは再び扉を閉じて、視線を上げる。
ヒュウガは何も言わずにミカゲの手を再び握り閉めると、手を引いて抱きしめてきた。
抱きしめられたミカゲも何も言わずに背中に手を回して、ぽんぽんと背中を叩いた。
「ありがと。」
「うん。」
「あと、ごめんね?」
「ん?」
「今日、部屋に戻るの遅くなるかもしれない」
「それくらい構わないから。思いっきり祝われてこいよ。」
一度強く抱きしめると、同じ強さで返してきて離れる。
サングラスで隠れた表情からは口元の笑顔くらいしか見えないけど、きっと本当は嬉しくて泣きたいのだろう。
泣いてしまえばいいと思う。この人は、参謀長官とは違う意味で気持ちを隠すことに長けてしまっているけど、今日くらいは。
「行ってらっしゃい。」
「うん、行ってきます。」
掠めるようなキスをして、ミカゲは参謀室前から離れた。
部屋に戻ってきたら、少し酒臭いのだろうか。
そういう恋人を見るのもいいだろう。酷かったらシャワーを浴びせて。
一緒のベッドに入る時に、もう一度「誕生日おめでとう」と言ってやろう。