何がいい?
何がいいと言ってみて、まさかお前がいいなんてどこかの漫画のような回答をされるとは思わなくて。
「・・・・マジ?」
なんて軽く返してみれば、大真面目な顔で「マジだ」と言われた。
10月の中間試験の終わった日。どうにか目標点数は確保できたであろう試験のないように安堵して、出されたケーキを当然のように頂いてふと沸いた疑問は中旬に誕生日を迎える、今居る家の人間でありこのケーキの製作者へのプレゼント。
どうしようかと思案しながら会話していた所為で思い切りデコピンを食らわされた額を撫でながら、思い切って当人に欲しい物を聞いてみた。
そしたら、こうだ。
「・・・・何、じゃあオレにでっかいリボンでも巻きつけて、スキニシテとか言ってたらいいの。」
「それも良いかもしれんが、どちらかと言えば大きな箱の中に入って俺が開けるのを待ってました、というほうが面白いかもしれんな。」
「からかってんの?」
「先程から本気だと言っているだろう?」
一瞬、本当に一瞬だけ、場の空気が凍った。いやだってリボン巻きつけも箱の中に入るのもどっちもオレはごめんだからさ、ちょっと引いてもいいと思うんだ。でも本気だといった顔は何時も通り涼しい顔で自分で作ったアップルティーに口をつけていたりする。
「本気で誕生日プレゼントの中身はオレでした、がいいのかー。」
正面に座っているハクレンから視線をそらす様に、ソファに思い切り凭れかかって天井を見上げる。
シミもヤニ汚れもない真っ白な天井は見ていて気持ちがいい。
少し開いた窓からは、まだ暖かさの残る秋の日差しと、甘い金木犀の匂いがしている。
「なあ、ハクレン。」
白い天井を見上げたまま、オレは恋人の名前を呼んでみた。
そう、恋人同士。だから今更誕生日だからって括りつけるのはどうなんだろうと正直思うわけです。
記念日としておいておきたい、ということなら、どうせならお祝い事は沢山あるほうがいいだろうし。
「誕生日まで、待ちたいか?」
ソファに凭れかかったまま、顔を曲げて横目でハクレンを見るとティーカップを手に取ったまま固まっていた顔がふいに緩んだ。妙に嬉しそうなその顔をなんだよと言って睨んでやると、今度は声を上げて笑われた。
「顔が赤いぞ。ミカゲ。」
「はっきり言うなよ!」
これでも一世一代の大告白だったんだからな!という言葉を吐き出す直前で飲み込んで、今度は絶対に顔が見れないように足を上げて体育座り。
よそ様のソファーの上に足を上げるなんて礼儀が悪いと判っているが、これはハクレンが悪いんだからいいんだ。多分。
ふと気づくと正面にいたはずの彼はすぐ近くまで来ていて、思わず目を見張ったら驚くほど優しい手つきでオレの頬を撫で上げ、透明感のある紫の瞳に愛しみと愉しさを湛え唇が自分のそれと付くかつかないかの距離で囁く。
「待たなくても良いのなら、今からでもいいか?」
「・・・それはちょっと心の準備ができて」
ない、と言おうとしたのだが、生憎話すべき唇が塞がれてしまったので言えませんでした。