タイトル

Hold "happy birthday" in a breast.





テーブルの上に小さな箱がひとつ。
黄緑色のラッピング用紙に、ピンク色のリボンが結ばれたその箱には見覚えがない。
親の元を離れてから帰宅して一旦リビングに向かう癖がついたミカゲは、真っ先に目にはいった小さな荷物に目を点にした。
自分が知らないのだから、同居人が買っただろう。しかし何故あんなところに?はてと首をかしげながら自分の部屋に戻る。


誰かへのプレゼントを忘れて置いていった?それは無い、と直ぐにその考えを消す。あのアヤナミに限ってそんなポカミスをするとは思えない。だとすると自分宛のものなのだろうかと思うが、それこそ無いだろうと苦笑いを浮かべた。

だって、アヤナミはミカゲの誕生日を知らない筈なのだ。

聞かれたこともなければ答えたこともないものを、どうやって知ることができるだろう。ましてや、二人に共通の友人などはいない。だからプレゼントなんて用意できるはずがない。
うんうんと着替えながら頷いていると、扉の向こうで音がした。帰っていたのかとジーンズに履き替えながら居間へ向かおうとすると、自分と入れ違えるように扉を開けた瞬間に閉まる音。

いつもなら帰宅したら必ずと言っていいほど部屋から出てくる上に帰ったと言わなかったら怒ってくるような人が、一体なんなのだろうと再び居間へ向かうと、さっき見た時には無かったものが自己主張するようにA4の大きさでテーブルの上に乗せられていて、思わず吹き出した。


「『おまえの』って・・・子供かよ。」


箱を矢印で指して、書かれていた内容を読んでみると自然と笑みがこぼれてしまうと言うものだ。
てのひらに収まる自分のものだと確定したそれを持って、ミカゲが次に向かったのは同居人の部屋の前。
来るものを拒絶するように閉まっている扉を叩くと、普段は入るように促す声が聞こえてくるはずの場面で何故か向こうから出てきたので、ミカゲは笑いを堪えるのに耐えた。


「どうした。」
「いや、ちょっとご質問がありましてですね。」


震えるミカゲを妙だと思ったのだろうか、僅かに首を傾けてくるアヤナミは自分がいつもと違うことをしていると気づいていないのか。おかしくて、嬉しくてたまらないのを再び堪えて手の中の箱を自分の目の前まで持ち上げた。


「これ。」


見上げると、解読不能なパズルにでも出会ったかのような顔をしてこちらを見ているアヤナミが。
珍しく表情が揺らいだことで堪らず両手で持ったもので、口元を隠した。


「そんなに私が面白いか?」
「だっ、て、さっきから行動ヘン・・・っく。」


力みすぎて箱が潰れてしまわないように意識しているのもあってミカゲの我慢は限界だ。しかしここで堪えなければ次はないので、深呼吸を繰り返して落ち着かせる。


「ごめん、こんな事をしに来たわけじゃないんだけど、あんまりにも嬉しくてさ。」
「何が嬉しい。」
「んー・・・その前にさ、なんでコレ手渡しでくれないんだ?」


春生まれを象徴しているように、日向のように笑うミカゲとは反対にアヤナミの眉間はどんどん険しくなっていく。
緩く手首を揺らしながら、優に数十秒はお互いに見つめ合った後、アヤナミは視線を外した。


「プライベートで祝いの言葉を述べるのは、あまり得意ではない。」
「ぶっ・・・素直に、恥ずかしいって言えよ。」


思わず吹き出し足元に視線を向ける。なんでこの人はいつも素直に言ってくれないのか。それで何度も色んな人間に勘違いされているというのにいつもこんなだ。それがこの人の良い所でもあるのだろうけど、そばで見ているものとしてはもう少し素直な言葉で言ってみても良いのではないだろうか。


「でも、ありがと。わざわざ調べてくれたんだろ?アヤナミもこんなことするんだ。」


そういえば、箱の中身はなんだろう。両手ですっぽり収まるくらいの箱の中身に想いを馳せて、かくりと首を傾けた。それほど大きくはないようだし、重たいものでもないようだが。

ここで開けてもいいだろうか、いや、もしかしたらお互いにとってすごく恥ずかしいもののような気がするし後で開けたほうがいいかもしれない。
リボンの端をつまんでミカゲが悩んでいると、不意に肩に重みがかかって視線を向けると手が乗せられていた。

つられるように視線を上げるとときどき自分に向けられているあの視線があって。


「ミカゲ、」















緊張を伴ったその声に、耐え切れなくなって笑って、ありがとうと抱きしめた。










-------------------------------


アヤたんがテイト以上に不器用な祝い方しか出来なかったらどうしようと思った結果。
誕生日おめでとう!ずっと素敵な笑顔でいてください!