Herzlichen Gluckwunsch zum Geburtstag, meine Liebe(アヤミカ*執事パロ)


















起きて、身支度をし、今日一日の主のスケジュールを確認後、食堂へ。
その前に足を止め、一度部屋の中へと急いで戻る。
今日は仕事を始める前に、することがあったのだ。















食堂で主人に穏やかな朝を迎えて頂く為の紅茶を用意している最中、ふいにこめかみの奥で痛みを感じて軽く頭を抑える。
ここ最近、多忙続きだったツケが来たのだろうかと思うと同時に、体調を崩さないようにだけは本当に注意していたはずなのにと、この屋敷の唯一の執事であるミカゲは軽く溜息をついた。
この家には家令が居ないため、屋敷の管理がミカゲの手に任されている。
それも、自分の助手とフットマンが入ってきたので仕事を教え、無事に引き継ぎが済めば少しは落ち着くかと思ったのだが、その後すぐに別の仕事が入り中々落ち着く機会が無かったのだ。
今日は、その仕事もひと段落してから初めての主人の休暇ということで、屋敷で静かに過ごす事を好む主の為と共に穏やかな一日を過ごせるだろうと思ったのだが・・・穏やかにといっても、ベッドの中で眠っていたいわけではない。

痛みはすぐに治まったのですぐに紅茶の用意を再開し、ティーセットを抱えて主の寝室へと赴く。

基本的にこの時間には仕事だろうが休暇だろうが起きているような方なので、鈴が鳴るのを待つことはない。
緋い絨毯が敷き詰められた床の上を歩き、階段を上がり、主の部屋の前まで赴く。
部屋のノックはする必要はない、と言われているので、万が一主が眠っている可能性を考え静かに扉を開けた。

「失礼致します。」

控えめに礼を取り中に入ると、天蓋つきのベッドの中に人が居るのを見つけ、おやと片眉を上げてベッドの近くまで歩み寄る。
前述しているが、何時もならこの時間帯には起きている方なのだ。その主が柔らかなシーツの中で殆どそのシーツを乱さす事なく眠っている。今までどんなに休んでくださいと連呼していたにも関わらず、どんなに深夜に帰ってきても必ず起きてミカゲが用意してきた紅茶を待ち構えていた人が、だ。

いっそこのまま起こさないほうがいいのだろうか。音を立てないよう細心の注意を払いながらサイドテーブルにティーセットを置き、しばし思案するが、すぐに右手を左胸に当て声を掛ける為に体を45度傾けた。

「アヤナミ様。お目覚めの時間でございます。」

うわあ初めてこんなこと言った。
あくまでも表面上は緩く弧を描き目尻を下げて。表面には見えない脳内で、珍しいことに対する感動と若干の緊張が相まって妙な気恥ずかしさを感じる。
このまま起きなかったら今度はどうしようと、そんな不安を持たなくても物覚えがついた頃から執事としてみっちり鍛えられた体が勝手に動くことをミカゲ自ら知っているはずなのだが思考回路は正常稼動していない。

少しだけ、揺さぶれば良いのだ。それで起きなければ諦めてティーセットを下げればいい。だがミカゲにとってこのアヤナミという名の主に触れるのはどうしても抵抗がある。触れた所から体に熱が灯ったかのようにあたたかくなって、今が仕事中であることを忘れてしまいそうになるからだ。


切実に起きて下さいと願って、願いどおり瞼を開けた主はしばし熟成した赤ワインの色の瞳でミカゲを見つめた後、一度瞬いてすっとミカゲの顔に手を伸ばした。
無事に主を起こせ安心しきっていたミカゲはこの行動に体を竦ませたが、逃げることは無く布団から出てきた掌が頬を包む感触を受け止める。
次いで発せられたのは矢張りというか、こんなに早くと言うべきなのか判らないことだった。

「体調を崩したか。」
「一目でお気づきになるとは、流石です。」

苦笑を浮かべて言うと、諌めるように瞳を細くしてやや骨張った手で頬を撫で、そのままその手を後頭部へと移動させる。
流石に嫌な予感がして身を引こうとするが、ミカゲよりも遥かに年を数え、何より幼少時より彼を知っている故に行動すらお見通しなアヤナミから逃げられるはずもなく、気がつけば横になっている主の上に被さるようにして倒されていた。腕を広げて距離をとろうとしても、後頭部と腰にしっかりと手が回されており、上手く動けない。

「旦那様・・・旦那様が休暇を取られていても、私は休暇を頂いている訳ではないのです。」

仕方なく言葉の応酬でなんとか離してもらえるようにはなるまいかと、困った顔を作り見上げると、相手は呆れたように息を吐いた。

「偶には自分のことを顧みたらどうだ。」
「何を、で御座いますか。」
「今日はお前の誕生日だろう。」

アヤナミの言葉に、ミカゲは今度こそ動ける箇所をなくした。してやったりといった顔をしたアヤナミは普段はしていないカフスに触れ、珍しく笑みを浮かべた。

「これは去年渡したものだな。一昨年は今胸につけているタイピンだったか。誕生日に今まで渡したものを身につけてくれるとは、こちらにとっても嬉しいことをしてくれる。」
「旦那様、もしや私が入る前から起きていらっしゃったのでは?」
「さてな。・・・今年は事前に用意する時間が無かったからな。お前も休暇を取れ。今のうちに疲れを取って、昼から二人で買いに行くぞ。」

この方起きてらしたんだなと恨めしそうな顔で見る前に、くるりと視界が反転して上下が反対になる。このままでは服に皺が寄るや、主のベッドに靴を履いたまま上がってしまっているという事実に焦るが、直ぐにその主にミカゲの靴を片方脱がされてしまい、別の意味で焦る。

「離して、いただけないでしょうか。」

心底困って懇願するが、まるで意に介さないと、非常に機嫌の良いアヤナミはもう一方の靴も脱がしてしまう。

「普段は掴まれてはくれぬ日溜りが、折角私の腕の中に納まっているというのにみすみす離すと思うか?」







そう言って、先程ミカゲが押さえていたとは知るはずもないのに、丁度指で触れていたのと同じ部分に口付けを送り小さく祝いの言葉を送った。
引き寄せたときからずっと染まっていた頬は既にこれ以上赤くならない所にまで来ている。
先程、起床の際に呼びかけられた時といい、今の顔といい、今日は珍しいことばかりだと、たまには己のサイクルを変えてみるのも良いとアヤナミは薄く笑った。















----------------------- 補足
・ミカゲは普段アヤナミ様を「旦那様」と呼んでいる。
・幼少時は「アヤナミ様」だったのにいつの間にか替わっていたらしい。
・最後の三行だけアヤナミ様視点。

・多分このあとブラックホークの皆が来て雰囲気ぶち壊し。


一読ありがとうございました!